今月のあなたの街の材木屋さん

第26回 :有限会社則岡木材(兵庫県伊丹市)

こんにちは!三平です。


解体前の「ナオミの家」
↑ 解体前の「ナオミの家」

今回の訪問先は伊丹市南野の(有)則岡木材さん、応対してくださったのは社長の則岡宏牟(のりおか・ひろむ)さんです。
 
則岡宏牟さんはいま話題の人物です。ご存知の方も多いと思いますが、新聞やテレビ等で幾度となく報道された旧谷崎潤一郎邸の解体・移築・復元に取組んでいる渦中の人です、それもボランティアで。きっかけは平成18年3月中旬に載った夕刊紙の記事。文豪谷崎が名作「痴人の愛」を執筆した旧宅(仮称)「ナオミの家」が解体されるという記事を目にした則岡さんはそこを管理するNPO法人「谷崎文学友の会」に連絡、同会代表理事たつみ都志武庫川女子大教授にコンタクトしました。「私利私欲のない、信頼できる人物だ」と感じ取った同教授は、則岡さんに解体・移築・復元を全面的に依頼しました。伊丹の名も無い材木屋さんが谷崎の「ナオミの家」の移築・復元を手掛ける、という報にマスコミは飛びつきました。大手企業がやるのなら別に珍しいことではなく、経費もふんだんにあり、宣伝効果も大きい。が、則岡木材や則岡宏牟とは一体何物だろうか?と不思議がったというのです。             
 

倒壊前の鎖瀾閣
↑ 倒壊前の鎖瀾閣
たつみ先生との打ち合わせの過程で、1995年の阪神大震災で倒壊した芦屋の「鎖瀾閣(さらんかく)」の復元に話が及んだ時、またしても則岡さんは手を挙げ、この建物の復元にも取組むことになりました。「鎖瀾閣」という名で親しまれたこの家で谷崎は名作「卍」や「蓼喰う虫」を執筆しました。
「ナオミの家」は平成18年6月に解体作業は完了、解体材は則岡木材の倉庫に保管されています。一方、「鎖瀾閣」の復元工事は平成18年10月頃から始まる予定です。復元予定地は阪急岡本の甲南大学に隣接する「岡本梅林公園内」。だが、「ナオミの家」の移築場所は未定(平成18年8月現在)とのこと。則岡さんは「鎖瀾閣」と同じ敷地内を希望しているのですが、頭の固い行政サイドが逡巡しているそうです。則岡木材は工務店経営も行なっており、同社が2物件の工事一式を負担するのです。(一部寄付金を充当)
心底、則岡宏牟さんは材木屋の誇りだと思いました。
 

則岡木材本社玄関前
↑ 則岡木材本社玄関前
谷崎邸の話ばかりになってしまいまいたが、本題に戻り材木屋さんとしての則岡木材に移ります。

則岡木材は新大阪駅から新幹線に乗って神戸方面に向かうと6分後に左手に同社の看板が見えます。一度注意してご覧になってください。
社長の則岡宏牟さんは昭和22年6月生まれ、59歳。出身は和歌山県有田市。高校を卒業後、尼崎で木材業を営む遠縁の紹介で材木屋さんに就職、昭和49年、伊丹で独立開業しました。同社の今の繁栄を一代で築いたまさに立志伝中の人物です。5年後に建築会社(則岡工業梶jを立ち上げ、その3年後に木材の輸入会社(潟Gヌ・エヌ・コーポレイション)を設立しました。その後N・Nコーポレイションは不動産事業にも進出し現在では分譲住宅年間50棟の実績を誇っています。 

看板
↑ 看板
製伊丹市中野東の交差点には同社の常設住宅展示場「Sunny Side(サニー・サイド)」があります。伊丹のこの周辺には「サニー・サイド」の看板がいたるところにあり、やけに目立ちます。この展示場は極めてユニークで「ドライブ・スルー」が特徴です。マク・ドナルドのように車で建物の周囲をぐるっと回り、車内からモデル住宅の外観が見学出来る仕組みです。当面の目標を年間100棟とする則岡社長は頻繁にテレビ(9チャンネルのケーブルテレビ)で広告宣伝を行なっています。今春、元阪神タイガースのピッチャーだったマイク仲田さんと出演した「お住まい探検隊」がシリーズで放映されました。

サニーサイド
↑ サニーサイド
同社が手掛ける分譲住宅は則岡社長のアメリカ経験が色濃く出た洋風でモダンな外観、一方内部は、健康に優しい木質・自然素材をふんだんに使った健康住宅です。さらに木の大好きな則岡さんは「古民家の移築」をキャッチフレーズに古材をそのまま使った伝統的な日本住宅も建てています。大阪木材仲買協同組合が毎年実施している「自慢の木のおうち」コンテストに同社の作品が今年入選しました、タイトルは「180年前古民家移築」。先ほどの谷崎邸移築の原点がここにあるのです。興味のある方はこちらをご覧になってください。

サニーサイド内部
↑ サニーサイド内部
30数年この土地に住み商売をしているので知人、友人も多くいろんな人が訪ねてきます。住宅の相談や木についての質問や販売、何でもお受けしますよ、と則岡さんは一般の人にも門戸を開放している。最近ホームセンターが賑わっているようだが、やはり高いように思う。少し専門的な人はやはり材木屋さんに来ます。「リフォームもやりたいのだが新築分譲と注文住宅におわれてそこまで手が回らない」―これが実情でしょう。

谷崎邸の話に夢中の則岡社長
↑ 谷崎邸の話に夢中の則岡社長
則岡さんは多趣味というか、とにかくすごいの一言。なかでもアメリカ・カナダの国立公園巡りは有名。0泊2日(機中泊2回)でアメリカ旅行するのも朝飯前、思いついたら、時間が取れたら、すぐに機中の人になる。好奇心の固まりのような人で仕事も趣味も遊びもすべて待ったなし、四六時中動いている人なのです。前しか向かない。立ち止まらない。なにがあってもポジティブ「たとえ商売で損をしても、よくこれですんだな」と思うそうです。車の蒐集も常識外。ビンテージもの、クラシックカー合わせて160台以上保有しています。一部は自宅及び周辺の車庫に保管していますが大半は地元和歌山の倉庫内に眠っています。一番古い車は1904年製のウィペック(米)セルモーターだそうです。彼が今一番はまっているのはヘリコプター。すでにアメリカで2年間講習を受け、もうすぐ免許を取得するそうです。

建築した物件写真が一杯です
↑ 建築した物件写真が一杯です
苦労話を伺いたいと申し出たら「苦労なんてない。苦労と思っていない」の一言、予想通りでした。今の材木屋さんに一言、と求めたら「金持ちすぎたんちゃうかな、もっとハングリーにならんと・・」とのコメントでした。一代で築いた人の含蓄ある言葉でした。

則岡さん長時間ありがとうございました。そのバイタリティーとタフさ加減には敬服しましたが、くれぐれもお体を大切にしてください。谷崎の旧二宅の移築・復元が完了したら、もう一度お伺いします。


有限会社則岡木材

〒664-0865
兵庫県伊丹市南野6-1-37

TEL 072-779-1020
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