今月のあなたの街の材木屋さん

第57回:株式会社大和木材商会(岸和田市木材町)

こんにちは!三平です。

今回の材木屋さんは岸和田市木材町18-7の(株)大和木材商会さんです。本社は大阪市西区北堀江1丁目6番25号で四ツ橋の交差点を南に一筋、西に30メーターほど入った所にあります。昭和40年代初頭まで四ツ橋には橋が四本[上繋橋(かみつなぎばし)・下繋橋・炭屋橋・吉野屋橋]架かっていました。長堀川と西横堀川の二つの川が交差する交通の要所だったのです。今は埋め立てられて影も形もありませんが、横断歩道の真中にある「涼しさに四ツ橋を四つわたりけり」の碑が往時を偲ばせます。三平がこのコーナーで幾度となく述べているように「材木屋のある所に川がある」そのものです。長堀と横堀は材木屋さんの街だったのです。大和木材商会さんの本社はビルの谷間に輝く昔ながらの木造家屋ですからすぐに分かります。残しておいて欲しい建造物だと勝手に思っています。

堀江の本社古風な佇まいです
↑ 堀江の本社(古風な佇まいです)
前置きがいつものように長くなってしまいましたが、岸和田営業所でインタビューに応じて下さったのは社長の杢保(もくぼ)富男さん、専務で弟さんに当たる杢保正夫さん、それにご子息で常務の杢保茂明さんです。杢保姓は珍しい姓ですがご出身は徳島県板野郡だそうです。

左が専務の正夫氏右が常務の茂明氏
↑ 左:専務の正夫氏 右:常務の茂明氏

創業者は父上の杢保常明さん。明治44年生まれで16歳の時に徳島から大阪に出て、西長堀にあった浪速木材店で修業を積まれ昭和21年に四ツ橋で独立開業されました。法人改組は昭和26年1月です。「大和木材商会」という社名の由来について伺いましたら、杢保社長は「戦時の木材統制の頃やむなく退社して、その後住友金属工業のある和歌山県松江の方で会社員として木材の集荷・販売を任されていた時代があり、大阪と和歌山から大和と名付けたらしい」と答えて下さいました。

外観
↑ 岸和田営業所(外観)

かつて、大和木材商会さんは「台桧(たいひ)」の取り扱いで名を馳せた時期がありました。台桧とは台湾産の桧のことで、今では伐採禁止により市場からほぼ姿を消していますが、神社仏閣から一般住宅まで幅広く使用された高級材です。その辺の事情について伺いました。
台桧は昭和34年ごろから扱い出した。当時は内地材全盛時代だったが池田内閣の所得倍増計画等により住宅建設が増え出し内地材だけでは需要が賄えないだろうと先代は予測し値打ちのある台桧に着目、必ず普及すると直感し、台湾からの直輸入で扱い量を伸ばしていった。もともと当社は銘木色の強い会社、その中でも台桧と20年以上に亘り取り組めたことは大きな力となった。

製品置場
↑ 製品置場

岸和田進出とその後の経緯を尋ねました。岸和田の大阪木材コンビナート内に進出したのは昭和46年。長堀界隈の当社置場は4ヶ所に分散しており交通事情も悪化し、街の環境も大きく変化していた。倉庫を岸和田営業所(現2200坪)1ヶ所に集約することにより工場兼物流機能が大幅にアップ、四ツ橋は本社機能のみを残した。置場スペースに余裕が生じた分、量も品目も増えて行き、昭和48年の第一次オイルショックの混乱時も売り惜しみせずなんとか迷惑を掛けず材を供給できました。

製材の台車です
↑ 製材の台車

同業者中心に販売していた台桧ですが、良材の入手難・高騰・住宅の洋風化とともに扱い量が減少。昭和63年に将来を見越して木造軸組のプレカット事業に参入、又造作材の加工場を設置し今に至ります。
杢保富男社長は昭和20年に疎開先の徳島で誕生。堀江小学校、堀江中学(一期生)、泉尾高校から大阪経済大学に進まれ卒業後東京木場の銘木屋さんで修業、昭和45年に家業に就かれました。社長就任は昭和63年です。

プレカット工場
↑ プレカット工場

杢保正夫専務が工場内を案内してくださいました。同社工場の奥は木材コンビナート内の貯木場に接していて、倉庫との間に製材用の大台車が設置され、造作材の加工場には7軸モルダー機をはじめ様々な木工機が並んでいます。杢保社長は言います「当社は木材を仕入れた時と同じ姿で販売するだけではなく工場内で製材・加工・プレカットのいずれかを経てお客さんにお届けするケースが多くなった。またゼネコンの仕事は木工事一式請負で工事図面から木拾いをし大工手間共の見積りは大仕事です」。

材木屋は場所も資金力もいる商売と言われていますが、今後身の丈を知り心に余裕を持つことを大切にして頭を使い、労力を惜しまず煩わしい仕事もいとわず、木と関わり奥の深さを感じ楽しんで続けていければと思います。

「これから当社も変らないと先がない」―この発言は横でインタビューを見守る後継者の茂明さんを意識してのことだと拝察しました。その茂明さんに伺いました。

昭和52年生まれ。専務の正夫さんと同じ神戸大学経営学部で学ばれ卒業後第一生命に3年間勤務して家業に就かれました。将来の夢を語っていただきました。「先の事を考えると不安で一杯になることもありますが、今は日々の仕事に全力で当たり、その中で生き残る術を皆で見つけて行きたい」

杢保富男社長、杢保正夫専務、杢保茂明常務、長時間ありがとうございました。

株式会社大和木材商会

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